200535日(土)、板倉町集会所に於いて、千葉市緑区小山町に計画中の産業廃棄物最終処分場(安定型)について住民勉強会(主催:土気環境安全協議会、共催:板倉大椎土地改良区)が開催され、残土・産廃ネットちば代表の藤原寿和氏による講演が行われました。

 当日は、65名を越える方が参集され講演後、熱心な意見交換も行われました。

以下に藤原氏の講演の大要を報告します。
 




「土気を産廃銀座にさせないために」

残土・産廃問題ネットワークちば代表 藤原 寿和 氏

 

 33年前に東京都に就職し、それ以来ずっと環境行政の仕事、特に廃棄物に対する規制や工場等の大気汚染、水質汚濁関係の仕事をしてきました。本日は、都の職員としてではなく、残土・産廃ネットちばなどボランティアで市民活動を行っていますのでその立場でお話させていただきます。

 今から数十年前、東京オリンピックの折の首都改造工事ででた建設廃棄物が千葉県内に投棄され、都内を掘削して出た建設発生土(残土)が千葉に大量に捨てられました。残土の中に有害なごみが混ぜられて捨てられていたことから、当時、県は市町村を指導して残土条例をつくらせました。私たちの会も当初、残土問題ネットちばという名称でしたが、県内、房総半島のいたるところで深刻な産廃問題が起きてきたことから「残土・産廃問題ネットちば」と名を変えて取り組んでいます。こうした産廃問題は新聞では知っておられたと思いますが、すぐ目の前の処分場計画により身近に感じていなかった問題が目の前に出てきたということだと思います。

 

環境の世紀 ヨーロッパは廃棄物の分別・保管・管理へ

穴を掘って埋める日本の処理政策は時代遅れ

 

 産業活動に伴い必然的に、産廃がでてくる、だから必ず処分場がいる、業者の言い分としては、ほっておけば日本中ごみだらけになってしまうのでそれらを埋め立てて自分たちは処分するのだ、ということを主張します。行政も、処分場が必要という立場から、産廃の適正処理を主張しています。さらに、最近は適正な場所が少なくなってきたことから、スムーズに建設ができるようにしていこうという考え方もあるようです。

皆さんも、立地場所として水源地など不向きなところがあるが、産廃をどこかに埋ることは必要だという思いを持っておられるかもしれません。

 業者は法律に基づいて産廃処分場をつくり、行政は法律に基づいてそれらをチェックする。都道府県などでは要綱などを定めて住民同意などを業者に指導していますが、廃棄物処理法にはそうした住民同意などの条件がないため、水源地の立地は認められない、住民の同意がないので認められないとして行政が許可しないでいると、業者から訴えられると行政は負ける、と行政は言います。

 

 そこで、処分場を巡って各地で紛争がおきています。紛争の目的は対立することが目的ではありませんから、環境を守り被害を未然に防止するためには実際にどうしたらよいかを考えるべきです。

今回のような安定型処分場ではなく、それより数段厳しい対策が施されている管理型処分場をつくっている日本の大手の建設業者の技術の専門家の発言として、こうした管理型でも環境を守れない、各地で問題が起きている、管理型には一般廃棄物処分場が多いのですが、穴を掘ってそこに廃棄物を埋めて匂いが出ないように土をかぶせるサンドイッチ工法ではだめだ、いくら遮水シートを敷いても将来必ず汚染がもれる、ということが指摘されています。

その業界でフランス、ドイツに処分場の見学に行ったところ、ヨーロッパでは、かつては日本と同じように最終処分と称して穴を掘って埋め立てていたが、現在はクローズド型というかドーム型といいますか、屋根を設けて雨が入らないようにして建物の中にできるだけ種類毎に袋につめて廃棄物を保管するという方式をとられていることを実際にみて、日本のごみ処理処分の仕方が間違っていると感じたそうです。

日本では、出たごみは未来永劫埋立することでやってきましたが、確かに昔は有機物土壌中のバクテリアで分解されて土に還元されてきましたが、しかし今はプラスチックなど自然界で分解されないものが埋め立てられています。現在は技術、資金の面で捨てるのが一番効率的ということになっていますが、ゴミといっても百パーセント資源であり、有効にリサイクルできる技術などの諸条件が整うまでは、保管・管理するというのがヨーロッパの考え方です。ドイツ、フランスだけでなくEU25カ国が分別・保管・管理という方向で進んでいます。 

 そうした状況と比較すると日本は穴を掘って埋めるという旧態依然の処理方法であり、あとは野となれ山となれという時代遅れの廃棄物処理策をとっているといえます。

 

処分場の中でもとりわけ危険な「安定型」処分場

〜安定型処分場の問題点〜

 

 処分場には「安定型」、「管理型」「遮断型」の3種類がありますが、すべて汚染は確実に起きます。「遮断型」はコンクリートピットの中に廃棄物を入れ屋根のある構造です。日本各地にある遮断型処分場の実態は明らかになっていませんが、八代海に面したある遮断型処分場に行ったところ外からしか見れませんでしたが、コンクリート壁面から有害物質が染み出ているのを目にしました。コンクリートと言っても寿命があり、永久構築物ではありませんからひび割れしたり劣化します。「管理型」も、日の出処分場などでゴムシートが破れたことが確認されています

 ところで、「安定型」は、最も簡単な構造でいいですよということですが、安定5品目として廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラス・コンクリート・陶磁器くず、がれき類、が指定されています。これらは、腐敗することはない、汚水など水分がとけだすことがない、ということ「安定型」と言われています。

 

問題点@ 5品目以外の安定していない性質(腐敗性、反応性、可燃性)を持った産廃が混入する

 

しかし、実際には、5品目以外に分類されているほとんどの廃棄物が入ってきます。全国各地の処分場を見てきましたが、最近は規制が厳しくなり以前と比較して本当にひどいものは少なくなってきていますが、行政対応の甘いところ、例えば福岡の筑穂町、ここの権限は県が持っているのですが、産廃の大きな山ができて悪臭が発生し、周辺住民の方は窓があけられない、健康も害されました。安定型にも関わらず、ガスも発生しました。福岡県はガスではなく水蒸気だと言い張りましたが、明らかに可燃物が燃え発生した煙が出ていることはビデオで見ても判別できました。昨年、ついに操業中のこの安定型処分場について裁判所が差し止めの判決を出しました。その後、地元に行った折悪臭を感じましたが、地元の人は五感が麻痺してしまったのかその匂いすら感じなくなっておられました。

自動車のシュレッダーダストは以前、廃プラスチックとして安定型処分場にうめることができました。ところが各地の地下水調査で安定型処分場から鉛、水銀、BOD有機物の汚染が検出されました。そもそも出ないはずのものが出たということで、調査して見るとシュレッダーダストがその原因だということが判明し、97年の改正だと思いますが、安定5品目からはずされました。実際にはシュレッダーにかけた自動車の部品をさらに細かく分離することは不可能ですから、安定型にも入ってきます。

有機物は腐敗発酵してガスがでます。農作物の廃棄物に付着して有機物が入ってきます。木屑は有機物で管理型に入れなければなりませんが、木造住宅の解体の過程で(今はしてはならないことになっていますが)ぐしゃっとつぶした場合、混合廃棄物として実際には入ってきていました。

このように5品目だけをぬだして処理することは不可能といえます。

そもそも安定5品目だけを処分することは不可能だということで、安定型処分場はやめようということが国会で取り上げられたこともありましたが、環境省は適正な処理をすれば可能だと抵抗し結局実現しませんでした。なぜ安定型に問題があるということわかっていながら禁止できなかったかというと、管理型にしようとすれば建設コスト、処理コストにべらぼうなお金がかかり、日本の産業活動が停滞することを危惧した事情があるとする専門家の指摘もあります。

 

問題点A 機能しないマニフェスト制度〜委託処理のリスク

 

廃棄物は排出事業者が自らの責任で無害化処理をするのが原則とされています。この場合は最初から最後まで管理できますから信頼性はまだましだといえますが、こうした処理をしているのはごく一部です。一方で収集・中間処理・最終処分を委託処理することも認められており、ほとんどのケースでこの委託処理が行われています。途中でいろいろなものが混ぜられ捨てられる、金だけとって不法投棄するということが行われてきました。

こうしたことを防止するために伝票で管理する(履歴を確認)マニフェスト制度がありますが、実際はこの制度が岐阜市の不法投棄の事例でも指摘されているように今や機能していないことが問題となっています千葉県の成田での医療廃棄物不法投棄問題の折にも、排出元として特定された7つの病院までたどった結果、マニフェスト制度が機能していないことが明らかになりました。建前と実態が異なっているのです。

本来、不正を防止するためには廃棄物の発生、収集、運搬の全過程が厳しく監視されねばなりません。しかし、各ゴミに県職員がついてまわることは不可能です。そこで、GPSなどを利用することが言われていますが、そもそもマニフェスト制度をいち早く採用したアメリカでは効果が上がらないというのが実態でした。

 

問題点B 5品目そのものに有害物質が含まれており、安定型と言えない

 

 安定5品目と言っても、安定型と言えない実態がります。

 「ゴムくず」を土に埋した場合、ゴムを食べるバクテリアも土壌中におり、その分解の過程で有害物質ができ変化します。ゴムと言っても安定している訳ではありません。

プラスチックも同じです。ダイオキシンで問題となった塩ビ製品にはその中に含まれる可塑剤、添加剤が溶け出します。光の変質防止などのため何百種類もの添加が使用されたり、鉛や環境ホルモン作用が指摘されているビスフェノールAなども含まれます。

また、最近では、抗菌処理や難燃処理が多用されています。ヨーロッパでは禁止されている臭素系の難燃剤が様々なものに使用されています。テフロン加工のフライパンも、自宅で直火で使用中、発生したガスで鳥が死ぬ事故が米国で頻繁に起こっていますが、フッ素化合物が塗布されたプラスチック、金属くずが安定型処分場に埋められる可能性もあります。これらの溶出により土壌や地下水、空気が汚染されます。

コンクリートも吹き付けアスベストを含有したものが搬入された経緯がありますが、規制がされているとはいえ昭和40年代につくられたアスベストを含んだ建設廃材の搬送、埋立てによる汚染の可能性も危惧されます。

 

問題点C 大気汚染の原因となる〜廃棄物処理法では大気汚染は野放し、杉並病も心配

 

粉塵の飛散防止のために水を撒くことなどは規定されていますが、重金属類や有害化学物質が気化し飛散し風に乗って周辺環境を汚染することは廃棄物処理法では規制されていません。

以前、平塚の安定型処分場の周辺での調査結果では、水銀やクロロホルム、トリクロロエチレンなどで他の地域と比較して高濃度の大気汚染が測定されました。本来ありえないものです。大気中に揮発した有害物が周辺数百メートルあるいは数キロメートルに影響を与える危険性があります。水の問題だけではなく、大気への影響も考えなければなりません。

管理型ですが日の出の谷戸沢処分場では、山の中の土壌から高濃度のダイオキシンが検出されました。ダンプが落とした焼却灰が飛散し土壌を汚染し、風の通り道にある集落でがんで死亡する人が増加していることが報道されましたが、処分場、大気汚染、健康被害の関係が疑問視されます。処分場周辺、その搬送ルートで有害物質が大気中に飛散する可能性があります。

東京都杉並区につくられたた家庭からでたゴミを圧縮するための中継所周辺で起こった健康被害は「杉並病」と言われていますが、調査によれば石油系の人工合成化学物質500〜600種類が空気中から測定され、廃プラスチックがこすれあうことで発生したものと考えられています。国の総務省の公害等調整委員会は、どの化学物質によるものか不明だが、中継所が原因であるとしていています。廃プラスチックを扱う安定型処分場でそうした被害がでていてもおかしくありません。

 

問題点D 有機物の腐敗発酵により悪臭や可燃性ガスが発生する

問題点E 火災の発生によりダイオキシン類をはじめとする有害物質が生成する

 

 千葉県内で見て歩いた経験から、悪臭の発生はほとんど避けられないと思います。どこも特有の匂いがあり、硫化水素、メタンなど発生し、メタンは可燃性ですから火災の発生が避けられません。ゴムタイヤも自然発火の危険性がります。火災がおきると廃プラ等の燃焼でダイオキシンが発生し、不完全燃焼により何千種類とも言える化学物質が発生します。

 

問題点F 発酵熱により地中温度が上昇し、周辺の農作物に被害を及ぼす

 

成田の山一商事の処分場では、有機物の混入による発酵熱により地中温度が上昇し、にんじん畑の作物に被害を及ぼしました。銚子屏風ヶ浦の管理型処分場でも周辺のキャベツ畑でキャベツがあるところまで生育するが商品になる前に枯れてしまうという被害が生じました。調査に行きましたが、地中温度が60度、もっと深いところでは80度くらいに上昇していました。

 

問題点G 有機溶媒や重金属類、廃プラスチック中の可塑剤等の溶出により、地下水が汚染する

 

 成田の安定型処分場に隣接する大栄町では、民家が飲み水として使用している30メートルの浅井戸でトリクロロエチレンが検出されました。調べると、安定型処分場に有機溶剤がすてられ、地中にしみこんだものが帯水層に溶け込み井戸水を汚染しました。県は場内に井戸を掘り、強制的にガスを吸い上げて火をつけてトリクロロエチレンがでなくなるまで燃やしていました。おそらくダイオキシンも発生していただろうと思います。

 

問題点H 処分場閉鎖後の維持管理リスク

 

現在の手続きは、設置許可するまではまだ慎重な面もありますが、問題は処分場閉鎖後〜もっとも途中で夜逃げする業者も県内で見受けられますが〜の維持管理の問題です。埋立てによるガスが発生しても、埋立てが終了すれば完全にガスが出なくなるまで責任を持って管理する業者はいません。その場合、実質的にはあとしまつを行政がやらざるをえなくなります。一旦許可をしたあとは行政も住民側もおろそかになる傾向があります。しかし、実際には閉鎖後にさまざまなトラブルが生じるというケースがあります。

 

 

裁判判例に見る安定型処分場の実態

〜「安全な飲み水を享受する権利」を認める〜

 

過去の安定型処分場をめぐる裁判では、住民がほとんどのケースで勝訴しています。

仙台の森町で、山の上に処分場をつくる計画に住民が反対し差し止めを求めた裁判では、どのぐらいの雨が降るとどのぐらいで井戸水に影響があるか日々の生活感で知っている住民の意向が、それに反する「専門家」の意見よりも尊重されました。判決では、「安全な飲み水を享受する権利」が住民にあることを認め、以後、この権利は各裁判の判例で引き継がれています。

君津のビオトープの安定型処分場で、県は汚水処理装置を付けさせました。ところが排水からシアンと鉛が検出されたため、地域住民は変なものを埋めたのではないか疑い、そこで証拠保全の仮処分申請を裁判所に提出しました。そして掘削したところ、合成洗剤で中身の入ったプラスチック容器〜中身は廃アルカリで管理型に廃棄する必要がある〜などが見つかりました。だいたい展開調査など業者はまともにやりません。このケースの場合、汚水処理装置があったから検出されました。なければわかりませんでした。県はその後、安定型処分場にも排水処理装置をつけなければならないと指導しているのか確認が必要です。千葉市はどういう指導をしているのでしょうか。

これからつくるものについて差し止めを求めることはできて見なければわからないといわれますが、裁判では様々な危険性故に差し止めが認められるケースが増えています。

 

最後に〜前例をつくらせないこと

 

一旦許可を出すと、次から次へと行政も許可をださざるを得なくなり、処分場の拡張や別の業者が進出し、産廃銀座になってしまう危険性があります。最初が肝心です。全国各地で、後々子孫から先代はなぜ認めてしまったのかということを言われないために、先祖から受け継いだ土地を守っていきたいという思いで取り組んでおられます。新興住宅街のように地域のまとまりのないところは容易です。前例を作らせないことが肝心です。

 

次に冒頭で触れたように今の日本の廃棄物処理方法は時代遅れの処理方法であり、早くこの方法から脱却することが求められます。業者も営利目当てで儲けがあるからやるのです。一方、千葉県内でも建設系廃棄物処分場で閑古鳥が鳴いているところもあります。日立製作所、キャノンなどがすすめているように、ゼロエミッションが一つの流れであり、その関係で、廃棄物量も減少しつつあります。

 

今後、建設に伴う相当なお金を返却するために利益を出さなければならないということであれば、無理して廃棄物を引き受けることもありうると思います。

 その点で、事業者が事業採算性のある事業をきちんと考えているのか、資金的、経理的な根拠などをきちんと審査することを法律で定めていますから、資金源、貸借対照表、ダンプ1台いくら、収益予定表などをださせて本当にきちんと事業をやる能力があるのかの厳格な審査を千葉市にきちんとやらせる必要もあります。