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国連持続可能な開発のための教育の10年(ESDの10年)とは?

「国連持続可能な開発のための教育の10年」は、持続可能な開発の実現に必要な教育への取り組みと国際協力を、積極的に推進するよう各国政府に働きかける国連のキャンペーン(2005年〜2014年)。「持続可能な開発のための教育」を表す英語(Education for Sustainable Development)の頭文字をとって「ESD(イー・エス・ディー)の10年」と呼んでいます。2002年に南アフリカで開催されたヨハネスブルグサミット(持続可能な開発に関する世界首脳会議)で、日本の市民と政府が共同提案し、同年12月の第57回国連総会で実施が決議されました。

「ESDの10年」にいたる世界の動き
1980年
国連環境計画(UNEP)、世界自然保護連合(IUCN)、世界自然保護基金(WWF)が提出した「世界環境保全戦略」で、「持続可能な開発」の概念が示される
1987年
国連ブルントラント委員会で「持続可能な開発」の概念が展開され、広く理解される
1992年6月
「国連環境開発会議(地球サミット)」で「持続可能な開発」の実現に向けた話し合いがもたれ、成果文書の一つである国際的行動指針「アジェンダ21」に教育の重要性が盛り込まれる
2002年8月
持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグサミット)」で日本が「ESDの10年」を提言、実施文書に盛り込まれる
2002年12月
第57回国連総会本会議にて「ESDの10年」が採択される
2003年7月
ユネスコより「ESDの10年国際実施計画2005〜2014」の草案が発表され、パブリックコメントの受付が開始される
2004年10月
第59回国連総会にユネスコの「国連持続可能な開発のための教育の10年実施計画」最終案が提示される
2005年3月1日
国連本部(ニューヨーク)にてESDの10年開始記念式典が開催される
※詳細はESD-JのHP「沿革」参照

この第57回国連総会で「ESDの10年」の国際的な推進機関として指名されたユネスコ(国連教育科学文化機関)は、2004年の第59回国連総会の場で「ESDの10年国際実施計画案」を発表しました。この計画案にはESDの10年の目的として、以下の5つが明記されています。

  1. 持続可能な開発の実現を人類が協力して追い求める中で、教育・学習が中心的な役割を果たすということについて、幅広い理解を得ること
  2. ESD に関係する様々な機関・団体・人々の間でネットワークや交流を推進すること
  3. あらゆる学習や啓発活動を通じて、持続可能な開発のあり方を考え、その実現を推進するための場や機会を提供すること
  4. ESDにおける指導と学習の質を向上すること
  5. ESDにおける能力を強化するため、各段階で戦略を策定すること

持続可能な開発のための教育(ESD)とは?

■持続不可能な今の社会

地球温暖化や酸性雨などに象徴される環境問題、人権侵害や異文化衝突といった社会的問題、貧富格差をはじめとする経済的な問題など、現代社会に生きるわたしたちは互いにつながりあう様々な課題に直面しています。

とりわけ、これまでの大量生産・大量消費を中心に据えた「開発」は、ごみや公害により環境を悪化させ、地球資源の乱用により自然界の秩序を乱すばかりか、地域社会の荒廃を招き、さらには他の地域の貧困化を推し進めるなど、深刻な問題を引き起こしています。

■持続可能な開発

わたしたちが直面する様々な課題を解決し、世界中の人々や将来の世代、みんなが安心して暮らすことのできる社会をつくるため、社会的公正の実現や自然環境との共生を重視した新しい「開発」のあり方が求められています。これが「持続可能な開発」と呼ばれるもので、その実現は人類にとって緊急の課題です。

「持続可能な開発」は、民主的で誰もが参加できる社会制度と、社会や環境への影響を考慮した経済制度を保障し、個々の文化の独自性を尊重しながら、人権の擁護、平和の構築、異文化理解の推進、健康の増進、自然資源の維持、災害の防止、貧困の軽減、企業責任の促進などを通じて、公正で豊かな未来を創る営みです。

■持続可能な開発のための教育=ESD

持続可能な開発を通じて全ての人々が安心して暮らせる未来を実現するには、わたしたち一人ひとりが、互いに協力し合いながら、さまざまな課題に力を合わせて取り組んでいくことが必要です。そうした未来へ向けた取組みに必要な力や考え方を人々が学び育むこと、それが「持続可能な開発のための教育=ESD(イー・エス・ディー)」なのです。

ESDは、学校だけでなく、地域や社会のあらゆる場で誰もが取り組むべき学習です。また、ESDは、各地域や個々人の実情に合わせたかたちで行われることが何よりも大切です。既に国内外の各地で、様々なESDが実践されています。今後、優れたESDがさらに広がり、持続可能な開発が実現できるかどうかは、未来を創る主役であるわたしたち一人ひとり次第なのです。

■ESDのエッセンス

ESDは決して新しい取組みばかりとは限りません。既に日本国内でも、様々なESDが実践されています。各地で推進されている環境・福祉・健康などをテーマとした総合的なまちづくり、学校と地域の連携で進められている総合的な学習の時間などは、ESD実践の代表例と言えます。ほかにも、環境教育、開発教育、多文化共生教育、福祉教育、人権教育、平和教育、ジェンダー教育などの教育・学習活動、さらに国外では国際協力の現場でも、社会的な課題に関わる様々な学びが進められてきました。これらの教育・学習活動はみな、多面的なものの見方やコミュニケーション能力などの「育みたい力」、参加型学習や合意形成などの「学習手法」、そして共生や人間の尊厳といった「価値観」などで結ばれています。このような目標、方法、価値観こそがESDのエッセンスなのです。

ESDはこんな力を育む学びのプロセス
1.
「わたしたち一人ひとりに、世界をよりよく変えていく力と責任がある」という信念
2.
わたしたちが思い描くよりよい社会を実現するための能力
3.
みんなが安心して暮らすことのできる未来につながる価値観・行動・ライフスタイル
4.
公平性や、経済や生態系の将来を考慮した意思決定の方法
5.
未来志向の考え
ESDはこんな価値観を大切にします
1.
世界中の人々の尊厳と人としての権利を大切にし、社会的、経済的な公正をすべての人に保障しなければいけないと認識すること
2.
私たちには将来の世代の人々の権利を守る責任が私たちにはあるんだと認識すること
3.
地球の生態系を守り、多様性に富んだ生命共同体を思いやること
4.
文化的な多様性を大切にし、地域社会、そして地球全体に「寛大・非暴力・平和」の文化をつくりだすこと
ESDにはこんな特徴があります
1.
学際的・総合的:ESDは個別の学習科目ではなく、いろいろな学習全体に反映されるものです
2.
基盤としての価値観:ESDは持続可能な開発の基礎となる価値観や原則を共有することを重視します
3.
批判的な思考と問題解決:ESDは、持続可能な開発を実現するなかでのジレンマや課題の解決に取り組むために必要な考え方や能力を育みます
4.
多様な学習方法の活用:ESDには、言葉、美術、演劇、討論、体験など、様々な学習の方法が用いられます
5.
参加型の意思決定:ESDでは、いかに学ぶかについての意思決定に学習者自らが参画します
6.
地域性の尊重:ESDは、地球規模の問題と同時に地域の問題を扱います。学習には、学習者が普段話している言葉を用います
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